ミクロ草創紀-興隆-3
静まりかえった店内で、ブレークがおどけた様に言葉を切り出した。
「あ~あ。こんなに派手にやっちゃって。コレは後で始末書を書かないとだね」 「一般…か」 その言葉を聞いて、オショウが意味ありげに呟いた。 やや粘着質なコマンダーは、更にブレークに説教じみた言葉を与える。 「いいか?そもそも私達は市民の安全を第一に考える事が責務であって…」 慣れた様子で説教を交わすブレークに、コマンダーも半ば呆れて説教を止めざるを得ない。 「大丈夫だった?ゴメンね~。もう少し早く出られれば良かったんだけど、人質が居たからタイミングが難しくてさぁ。あ、でも、あそこで気を反らしてくれて助かったよ。じゃなかったら…」 マスターは痛む頬を押さえつつ、ベックスのお喋りに漠然と頷いている。 「騒動の鎮圧協力に感謝致します。お手数ですが、この後色々とお聞きしたいのですが…」 「…すまないが、私は出来れば帰らせてもらいたいのだが」 「申し訳ありません。事件の当時者には、事情を伺う事が決まりになっておりまして」 それを聞いていたコマンダーが、オショウに思わぬ言葉を投げかける。 「いや、その御仁には帰ってもらって構わないよ、オショウ」 「良いんだ。…ご協力に感謝します。気を付けてお帰り下さい」 コマンダーにそう促されると、ローブの男は静かに店の外に去っていった。それを見送ったオショウは、いつも冷静な彼には珍しく、コマンダーに食ってかかった。 「あの男を帰してしまって、本当によろしかったのですか?コマンダー。あの時の身のこなし方はもちろん、歩き方一つをとっても 『一般』 とは違う事は明らかでしたよ」 「あぁ。もちろん解っているさ。とは言え、元々この任務自体が不自然なものだったからな」 「裏…と言うか、思惑かな。ただでさえ情報の無いテロ組織・シヴィル(Savage Civilizationの通称)を探る為にしては、あまりにも根拠の無い任務内容だったからな。なぁに、時が来ればその真相も自ずと見えてくるはずさ」 「ねーねー。見ててくれた?拙者の豪快な奮闘ぶり。あ、良ければ今度、君にも護身術を教えてあげようか。何を隠そう、そこの機械オタクにさっきの技を教えたのも拙者なんだよね」 「は、はぁ…」 まだ震える声で、騒動に巻き込まれた女性客がベックスに答える。 彼らIPUの存在は、大警視を筆頭にまだ数人にしか詳細を知らされてはいないのだ。 「それじゃ、カワイコちゃん。護身術は、また会った時にね」 「だから、ボク達はまだそんなに表立って動く事は出来ないんだって」 「失礼します」 彼らが去ると、カウンター席にいた女性客…ミキがすっと立ち上がった。 その声からは、先ほどの脅えた様子を窺う事は出来なかった。 ところ変わって、ここはミクロポリスのある司令室。上官であろう、犬型ヘッドのミリフォが矢継ぎ早に下士官に指示を与えていた。 「良いか。ここの警備体制は…」 そこへ、先程店内に居たローブの男が背後から話しかける。 「これは、内務卿。お役目ご苦労様です」 内務卿と言われた男は、僅かにフードをずらす。 「うむ。早速例の件だが、彼らを私直属の部隊としてくれ。もちろん、直接の指揮は今まで通り君に任せる事になるがな」 その言葉を聞いて、クルーガーは長い口元を少し綻ばせた。 「そうだな。それが彼らにとって、幸運かどうかは難しいところだがな…」 内務卿は、日焼けした精悍な顔には似合わない憂いの表情を浮かべながら、誰ともなく呟いた。ミクロシティを取り巻く混沌は、少しずつ、しかし確実にその速さを増していく…。 (ミクロ草創紀-興隆編-終わり)
by nekonekokoara
| 2009-09-02 12:00
| ミクロマン
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Comments(8)
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Gun0826
at 2009-09-02 13:29
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ドギー!ドギークルーガーじゃないか!(違う
えと何やら4人は更に大きな思惑の中で翻弄されそうな気配ですねぇ。 ミキ嬢がワケアリな人というのは意外でした。 次作はお正月でしょうか?(違うっての 続きを楽しみに待ちたいと思います!
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ビンテージ
at 2009-09-02 18:28
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フレンダーさん、出たーっ。大警視が犬警視に見えたのは内緒です(笑) 黒ローブの人はお偉方だったのですね、これは予想外。ミキちゃんも訳ありのようですし周辺の人間模様がとても気になる事ばかりです。続き、楽しみにしてますねっ。いずれ機会があればコラボをさせてほしいと思うビンテージでしたw
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Koduck
at 2009-09-02 22:52
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nekonekokoara at 2009-09-04 15:55
●Gunさん
あ、本当だ。ポジションと言い、正にそのままですね。全然気が付きませんでした。 しかし!ドギークルーガーは大好きなので、大警視の名前は「クルーガー」に決定です(笑)。 ぶっちゃけ何も考えていなかったので、素敵なアイディアありがとうございました! さて、その思惑とは…一体なんでしょうね~?私も気になります(笑)。 大局で流れは考えているのですが、細かいフォローとかきちんと出来るかな。 ミキちゃんのきちんとしたポジションも、実は考え中だったり。 次作は、建物の外になんとか出たいです。今まで屋内ばっかりなんで。でも、ブツが…。
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nekonekokoara at 2009-09-04 15:57
●ビンテージさん
犬警視ことフレンダーは、結構な抜擢でしたね。後は、ニックキューの出番をどこかで…。 >黒ローブの人はお偉方だったのですね、これは予想外 今のお偉方はこんな前線に出る事もないでしょうが、この世界ではガンガン前に出ます。 設定&雰囲気的には、明治維新間もない日本のイメージなので。 人間模様はある程度考えているのですが、どれだけ厚みを持たせる事が出来るか心配です。 草創紀はまだ日が浅いですが、コラボが出来たら楽しそうですね~。 使用キャラが被るところもあるので、パラレルワールド等だと良いかもしれませんね。 後は、世界観を確立出来るだけ、草創紀をきちんと続けなければ…。
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nekonekokoara at 2009-09-04 15:58
●Koduckさん
ミキは、次回からも早速出て来るかな? 戦闘シーンは望めないので、別に活躍の場を与えたいです。 >ちゃんと隠密しちゃってるじゃないっすか! 徐々にその存在を知らしめていくようにしたいのですが、 「その表現も上手くいくかな?」と心配事が尽きません。 次回、年内更新出来るように頑張ります。
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nekonekokoara at 2009-09-04 16:01
●SATさん
なんとか、ここまで進める事が出来ました。 実は、物語自体はまだそんなに進展が無かったり。 >マントの御仁の正体がとっても気になります 内務卿の直接の出番は、少し他の話を消化してからになると思います。 出来れば早めに色々な人間関係を整理したいのですが、まだまだ先だなぁ。 >次回以降もこの流れで楽しませて下さい☆ ジャンプの如く、次回から突然バトル展開になったりして。テコ入れ…とかね(笑)。
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